SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までの17の目標です。
いくつもあてはまるのが森林機能の維持です。
2030年以降も山林管理について将来に向かって考えることが必要です。
林業なんて成り立たない…
現実として、今も多くの林業家や山林所有者からよく聞く声です。
しかし、
「収益化できればすべて解決!」というモノでもありません。
林業は国を越えて地球規模で取り組む問題です。
これまでの問題が解消され、日本国内の林業経営が成り立つようにするにはどうすればいいのでしょうか?
難しい国内の林業経営
植林したら「非天然林」
森林面積が広大な北海道においても、手つかずの森林はそう多くはありません。
わけ入るのが困難だったり気候や環境が過酷な森林以外は、数百年来、伐採や植林したことがない天然林はもうあまり残っていません。
残っているのは伐採禁止区域や国立公園などです。
一度、伐採して植林した山林は天然林ではなく、農業のように継続的に人の管理が必要です。
荒廃した農地では作物がとれなくなるのと同様、林地も管理しないと良い丸太は生産できません。
それどころか土砂災害のリスクも増してきます。
数百年放置すれば「完全な天然林」に戻るかもしれませんが、それは現実的ではありません。
循環してない林業経営
なぜ、日本は木材大量消費国なのに、国内の林業経営は衰退するばかりだったのでしょうか?
植林や育林、担い手の育成など林業関連の予算は減らさずに、地域の森林組合を中心に運営されてきました。
政府の補助関連もたくさんあり一定の生産力は維持してきたと思います。
それなのに、国内の林業経営はたちゆかないというのはどういうことなのでしょうか?
国産材の循環の問題は「丸太をつかう」ところに問題がありました。
輸入材の影響
急激に丸太の需要減があったわけでないのに国産材が使われなくなったのは、輸入木材の増加が影響しています。
価格が安いのが最大原因です。
輸入材が大量に入ってきてから国産材の行き場がなくなり、需要がなくなりました。
今でもホームセンターに行ってDIY材料としてみかけるツーバイフォー材などは、ほとんどが外国産材です。
北米北欧輸入材の品質が向上され、公営のような製材品の生産体制により安価で生産されます。
中小企業を中心とする日本国内製材業は、生産性で太刀打ちできず縮小していきました。
使う用途がない国産丸太は行き場を失います…。
需要が無いので伐採する必要がなくなり、搬出が進みませんでした。
輸送距離は近い方が良い
これからは国産の丸太利用を真剣に考えることが必要です。
CO2吸収のための森林を持続可能なものにするには、そこで産まれる丸太をその近くで使う努力をしなければなりません。
木材価格は為替相場や市場価格に影響受けます。
単価に対して木材は輸送コストが大きい資材です。
トラック輸送はCO2を発生させます。
できるだけ近くにある国産材を利用した方が、流通過程のCO2の発生が少なく済みます。
木材を遠くへ運ぶことは非効率なのです。
変わる立木伐採
災害が多発し山林機能の向上のため植林が推奨されています。
そのために、一定の林齢に達した伐採適時の立木を伐採することが必要です。
高度成長期は旺盛な丸太需要を背景に、生産と利益重視でした。
今はSDGsや環境、災害防止の視点が重視されてます。
違法伐採を減らし合法木材を扱う認定事業者登録制度も広がっています。
立木の成長が効率よいエリアを分析したり、防災機能を高めたり鳥獣保護のエリアも広がっています。
伐採は悪か?
伐り出して丸太として有効に使い、そこに新たな苗木を植えてCO2を吸収してくれる若い成長木を育林していくことが大切です。
我々も巨木や大木は残しておきたいです。
しかし、
成長が止まってほぼCO2を吸収しなくなった植林木は残しておきべきなのでしょうか?
樹幹が腐朽して倒れやすくなっている巨木もよくあります。
木を植えることや枝払いや下刈りなど育林管理することに賛同は得られても、「伐採はすべきでない」と思われてきました。
農作物の収穫は批判される事はありませんが、植林した立木の伐採は悪とされてきました。
人の手で植えた植林木をいつかは収穫すべきです。
効率的な時期を選ぶことで林業の生産性を向上させます。
国公立公園や保安林のように伐採を禁止するエリアは間違いなく必要です。
生産林は計画的な伐採をすすめることで、防災と林業生産性の向上を目指せると思います。
植林をみすえた伐採
多発する土砂災害を抑制するには、必要最小限の土木作業にとどめた方が良いです。
植林地や林道を痛めないように伐採作業しなければなりません。
伐採の時に短期しか使わない作業道でも、植林の時や育林作業に入る時も考えなければなりません。
立木を倒す時も林道や他の植林木に被害を与えないようにします。
伐倒木を集める時に作業性が良い方法をいつも考えて作業しなければなりません。
立木伐採の時に、その後の植林を考えて作業することが大切です。
長期計画が大事
無計画な伐採は、自然環境を破壊し森林機能を失うことになります。
それは災害を引き起こし、大きな損失となってかえってきます。
地球規模で大きな開発目標が定められた今、現場レベルの民間人にできることは、長期の山林計画を持つことではないでしょうか?
伐採してお金にしてテキトウに植林しておこう…
これでは長期でみた時に総収入が高くなるとは思えません。
収入を長期で予測して、かかるコストを下げるためには長期の計画が必要です。
木材業もDX
これからは丸太の需要を分析し、山林の面積や密度を計画的に考えて伐採していくことが大事になります。
これまで人力や勘でやっていたことが多いです。
それらがデジタル技術を使ったシステムにおきかえられていくでしょう。
まもなく衛星の電波が山林内にも入ってくるでしょう。
リアルタイムに丸太需要、立木の育成状況を把握し、最適な計画をAIで求めて、無駄な動きや非効率を排除することになります。
木材事業者もデジタルトランスフォーメーションしていくことが求められていると感じます。
林業計画の前に…
長期計画を考えるには山林の現状を把握することからはじまります。
- 保安林なのか?
- 伐採禁止エリアか?
- 林道はあるのか?
- 蓄積量はどうか?
- 持主は?
やることがいっぱいです。
林業の問題を話し合うと将来の話になります。
50年もかかる投資だからでしょうか?
いずれにしても長期計画が大切になる訳です。
計画を話し合う前に自分のヤマの隣地主をよく知らない方も多くいます。
境界線も林道管理も「全部森林組合まかせ…」の山林地主も多いのが事実です。
林業長期計画案を考える前に、現状把握が今やることだと思います。
森林簿を手に現場を歩くことが大切になります。
山林を所有されてる方はぜひ行動を開始してください。