留萌でも空き家問題が深刻です。
豪雪地の空き家は積雪荷重が大きく、損壊がはじまると建物の痛みが早くなります。
毎年、雪解け時の春を迎えると雪の重みや氷の凍結融解で、外装のダメージが大きくなった空き家を目にします。
2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
住環境の維持や倒壊の危険や衛生状態を改善できるよう、これまでより自治体が空き家問題に取り組むことができるようになりました。
2024年4月からは相続登記の申請が義務化されました。
もはや、空き家を放置しておいても大丈夫とはいえません。
危険が及びやすい積雪地域の空家の問題を説明いたします。
積雪地の空家
空き家は全国で820万戸といわれてます。
だいたい450万戸が賃貸や売却目的の投資物件です。
統計でみると、空き家のほとんどは賃貸用や別荘です。
これらはあえて定住していなかったり、空室募集中の可能性が有ります。
それ以外の、いわゆる持ち家と呼ばれる物件が320万戸ほどで、これが住宅地で見かける空き家です。
人口減少中の日本において、将来に向かって空き家はさらに増加する見込みです。
特定空家とは
特定空き家とは、管理が不十分なため建物が倒壊の危険がある状態や、衛生状態が悪く周囲の住環境の景観を悪化させたりしてるときに、自治体が認定するものです。
傾いていて、今にも倒れそうな建物がこれにあたります。
庭木の管理が不適切で野生動物が住み着いたり、周囲の生活環境に悪影響が及ぶ場合です。
過疎化が進む住宅地を歩いてみると頻繁に見かけます。
放置してると税金が急に高額に
特定空き家に認定されて自治体から勧告を受けると、税制の特例が適用されなくなります。
住宅用地特例から除外されると、自治体にもよりますが固定資産税が約6倍、都市計画税が約3倍になってしまいます。
正確にいうと、空き家だと優遇されてた固定資産税と都市計画税の税率が更地同様に戻されるだけです。
これまでは1/3や1/6の税制優遇があったけど、特定空き家ではそれを認めませんということです。
除雪、排雪を考えてますか?
同じ北海道から移住してきた人でも、留萌の雪の多さに驚く人が多いです。
強風地なので吹雪が多く、雪が横に吹き飛ばされて「吹だまり」になったりします。
風の流れによっては塀や庭に局所的に雪が積もるのです。
留萌の積雪深は150cm程度で、冬期の合計積雪量は600cmに及びます。
除雪はもちろん、敷地が狭い時は「雪捨て」の排雪についてよく考えておく必要があります。
屋根の雪おろしをしないと…
吹だまりに似たものとして、屋根に「雪庇」ができます。
冬は北風が強く南側の屋根端に雪の塊ができるものを雪庇と言います。
冬でもときどき暖かい日があると、この雪庇が屋根の雪とともに落雪し被害に遭う危険があります。
屋根断熱がないと雪庇が氷塊になってたりします。
雪庇が落雪すると、落ちた雪塊が建物の外壁や窓にダメージを与えることがあります。
隣家が近かったりすると損害を与える恐れもあります。
外壁と屋根が傷みやすい
塩分と湿度を含んだ日本海側の風は、建物の外壁や屋根を急速に劣化させます。
腐食した屋根から雨漏りが発生すると年々建物全体を痛めることになります。
冬の積雪に耐えることができません。
近年は建材が進化して高耐久で高性能なものもあります。
しかし、いつも点検、補修を欠かさないことが大切です。
自治体が除雪してくれない道路もある
建築基準法第42条において、幅員4mに満たない道路は市道として認定されません。
冬の除雪が入らない道路も留萌には多く存在します。
除雪が入らない道路は、自らが除雪しない限り車両の通行が困難になります。
冬期に通行できない道路の先にある土地は、管理が困難になり利用価値が著しく下がります。
ゴミ出しするにも大変です。
雪国の土地探しには、冬の状況を見て検討することが極めて重要です。
売却が難しい地方の空家
弊社には時々「空き家を売却したい…」と相談をいただきます。
現在でも地方の地価は安く、空家建物の解体費用が土地代を上回ることがよくあります。
新築時と違う今
空き家を解体して更地にしても、土地売却が難しい場合があります。
街の賑わいの移動や廃校、主要道路の切り替えなど、新築時とは状況が全く違うということもしばしばです。
また、長い年月が経過して新築時とは法律が変わったことで、建築不適合建物だったり、再建築不可の物件となってしまっていることもあります。
通勤通学に不便で、新築ができない土地を買うという人は、残念ながらなかなかいません。
中古住宅として
しばらく空き家だった物件を「貸したり」「売る」ためには、”住める”状態にして買い手を探さなければなりません。
数年放置した状態の空家は、水道管などの水まわりを整備しなければなりません。
それらの整備をする前に、中古住宅が本当に「借り手がいるか」「買い手がいるか」の検討が大事です。
トイレやお風呂、キッチンなど、水まわりのリフォーム整備にはすぐに数百万円の出費になります。
慎重に検討しなければなりません。
木造の耐用年数は22年
国税庁によれば、木造住宅建物の耐用年数は22年とされてます。
フラット35など住宅ローンは35年で組むことも多く、税制上の耐用年数を過ぎても住宅を使うことになります。
耐用年数が過ぎれば、設備や建材が破損したり壊れやすいことを意味します。
確かにサッシは耐用年数が長めですが、20年ほどという建材もあります。
それらを放置していると住環境を悪化させる可能性があります。
実感としても建材は20年でガタがきてます…。
現場感覚からも「木造の耐用年数は22年」というのは「理にかなっているかな…」と思います。
計画的にリフォームしなければなりません。
増え続ける地方の空き家
建物は管理しないと急速に劣化し、資産価値を大きく下げることになります。
「住んでいないと痛みが早い」というのはそのためです。
設備や建物は整備して使い続けないと低価値になります。
メンテナンスがとても大切です。
土地の値段が安く買い手がなかなか見つからない地方の空家は、金銭的な事情で放置されている物件も多数あり、今後も増え続けると予測されてます。
2040年には2倍に
2040年には全国の空き家数は今の2倍、700万戸を超えるという試算もあります。
加速度的に増えていく予測です。
過疎地によっては一気に跳ね上がることもあり得ます。
集落が丸ごと空家だらけになることが珍しくないことになります。
積雪があると家屋の倒壊が心配されます。
今後、どうしても特定空家の指定は増え続けることが予想されます。
売却は早い方が
豪雪地の空家は冬の積雪荷重と凍結融解が建物劣化を加速させます。
住宅は個人資産ですが、公共性も考慮しなければなりません。
周辺の住環境にも悪影響を与える可能性があります。
空家のために仕方がなく周辺の住民が除雪していたり、落雪事故で危害を与えるリスクをはらんでいることも考えられます。
豪雪地の空家は倒壊危険性建物に達するスピードがとても速いです。
他者に損害をおよぼす可能性がでる前に急いで対処する必要があります。