林業経営のためには丸太を販売して収入を得なければなりません。
山林で植林育林してから伐採して収入を得ます。
農家と同じように林業では収穫物の立木を効率良く生産しなければなりません。
そのためには収穫期間を考えることが大切です。
立木の”生長速度”を考える事になります。
木は樹種により生長スピードが変わります。
生長が遅い広葉樹
![北海道の広葉樹はミズナラやイタヤが代表的で有名です](https://hokutobussan.com/wp-content/uploads/ryubo021.jpg)
立木は大きく分けて針葉樹と広葉樹の二つがあります。
北海道の広葉樹は、ミズナラやシラカバが代表的で有名ですよね。
秋の紅葉が美しいイタヤカエデ、野球バット原料のアオダモ、突板の高級材の真樺(マカバ)など、多くの樹種があります。
これらの広葉樹の多くは針葉樹に比べて成長スピードが遅いです。
伐採に適した時期までに長い年月がかかります。
生長が止まるまでに100年以上も…
生長が遅い広葉樹は伐採適期に到達までに樹齢100年以上も珍しくありません。
中には200年以上かかる樹種もあるそうです。
年輪幅が狭くて硬い木は丸太価値が高く、単位体積当たりの価格が針葉樹より高価です。
あまりに遅い成長速度のため、営利目的の林業家が広葉樹を選んで植林することは稀です。
生長が早い広葉樹もあるが
河川付近に生息するヤナギやシラカバ、外来種のユーカリなどは広葉樹でも成長スピードが早いです。
しかし、これらの樹種に高付加価値が付いた使用用途はほとんどありません。
価格は安く取引される丸太となります。
なので、林業経営する上でヤナギを積極的に植林することはほぼありません。
植林は針葉樹が主流
![北海道では、カラマツ、トドマツ、エゾマツなどが代表的な針葉樹](https://hokutobussan.com/wp-content/uploads/ryubo022.jpg)
一方、ほとんどの針葉樹は生長のスピードが早いのが特徴です。
北海道にはエゾマツなど古来からの針葉樹在来種も自生しています。
江戸時代から人工的に植林されてきたのは主に針葉樹です。
成長の早さが丸太生産効率で良いと判断されてきたのでしょう。
植栽された針葉樹は本州ではスギ、ヒノキで、北海道はカラマツ、トドマツ、アカエゾマツなどが代表的です。
35年で主伐することも
全部伐採する主伐期は樹種、植林場所にもよります。
十勝のカラマツは成長が早く35年で主伐されることもあります。
北海道の針葉樹素材丸太は、建築用材やパレット梱包材、おが粉材、パルプ材などに使われます。
消費資源として地場の素材丸太を使用できるサイクルなのです。
成長速度だけではない理由も…
確かに生長スピードは林業経営で重要です。
植林で針葉樹が選ばれる理由は他にもあります。
一般的に広葉樹は枝が太く多く、横に広がる樹種が多いです。
一方、針葉樹は細い枝が少なめでまっすぐ上空目指して成長する特徴があります。
枝払いが少ない伐採作業は効率が良く、1本の立木が長い方が作業効率を向上させます。
人力作業が主だった昔は特に伐採作業効率が良い針葉樹が好まれました。
木材でも使用用途が違う
![安価な針葉樹は、柱や壁などの住宅構造材や梱包材やパレット材として使用されます。](https://hokutobussan.com/wp-content/uploads/pallet01.jpg)
高級材の広葉樹
広葉樹は主に住宅内装仕上げ材や家具材として使用されます。
生長が遅いので年輪幅が狭く硬い木材で、木目が美しい樹種が多いです。
職人や愛好者からも高く評価されます。
単位体積当たりの丸太価格が針葉樹の何倍にもなります。
消費材の針葉樹
一方で安価な針葉樹は目につかなくなる柱や壁などの住宅構造材に使われます。
物流では梱包材やパレット材として使用されます。
軽くて加工が簡単なのが針葉樹の良いところです。
単位重量あたりの圧縮、引っ張り強度が十分にあり、物流資材として欠かせない資源です。
針葉樹は製品になってからの耐用年数が短期で消耗品として利用されます。
広葉樹と針葉樹は同じ木材でも使用される用途目的が大きく違います。
林業の投資から回収まで
![丸太生産は、収穫のサイクル、収穫時の丸太価格、生産費用を考慮して事業計画を立てるべき](https://hokutobussan.com/wp-content/uploads/ryubo023.jpg)
林業経営は農作物と同様に最低限の利益が求められます。
魚の養殖、畜産と同様です。
収穫のサイクル、収穫時の丸太価格、生産費用を考慮して事業計画を立てなければなりません。
販売資金回収までが長い林業
投資から回収までのサイクルが長いのが林業の特徴です。
30年以上の長期にわたりますので収穫時の経済環境が予想しにくいといえます。
さらに強風による風倒木、土砂崩れ、虫害、山火事のリスクがあります。
できるだけ短期間に収穫したいのはどの投資も同じです。
リスクマネジメントの視点からもうなづけます。
生長まで100年以上かかる広葉樹
北海道産ミズナラはウイスキー樽材料や高級建材として取引されてます。
過去20年ほど振り返っても高値安定しています。
ミズナラは生長まで100年以上かかり、樹齢500年以上もあります。
ミズナラを植林する林業者は稀です。
営利を目的としていない方や国公有林に植林されるのがほとんどです。
これだけ長い期間を計画的に育林できるのは国や自治体しかできないと思います。
経済林は針葉樹
民間で100年以上の事業計画をたてられる方は少ないでしょう。
北海道で山林経営されている方のほとんどは針葉樹を植林します。
植林や育林にもお金がかかります。
経済性を考えなければ林業経営を継続できません。
植林にかかわることがあれば「なぜ針葉樹なのか?」のヒントになれば幸いです。