人工林とは、人の手で植林育林された山林をいいます。
それに対して、長い年月をかけて種から自然に自生した山林を天然林といいます。
北海道の山林面積は550万haです。
そのうち約26%が人工林で145万haです。
人工林は一般的に、将来に立木を販売して利益を得るのが目的です。
収入を得るための経済林と考えられます。
しかし、立木売買の相談をいただいても買取できないことがあります。
人工林が保安林に指定されていて、伐採できない事があるのです。
なぜ、人工林なのに伐採できない?
所有する山林が保安林に指定されていることを知らずに、立木を売りたいと考える方がいます。
しかし、保安林に指定されていれば、所有者でも伐採ができません。
なぜ、自分たちの先祖が植林した人工林なのに、立木伐採して販売できないのでしょうか?
それにはまず、保安林制度を知る必要があります。
近年の人工林の役割には変化がありました。
植林したが、輸入木材の影響が…

日本国内では古くから建築などで木材需要が多かったので、木材を使用する目的で植林されました。
何百年も待っていられないので、成長が早いカラマツ、トドマツ、エゾマツなどの針葉樹が植えられました。
時が経ち、円高や海外の安価な輸入材の増加により、次第に日本国産の木材は売れなくなります。
建築構造も変化し、木造中心から鉄筋コンクリートも増えはじめたのも影響がありました。
植林した時は「どこでも植えとけば儲かる」と資産形成目的で、投資的に植林したかもしれません。
ずっと人の手が必要な人工林

人の手で植林した山林は完全な自然ではなく、根の張り方や深度、密集度などで天然林とは異なり、自然災害や保水能力など山林機能が脆弱です。
山間部は傾斜地が多く、農地の耕作放棄地ような平地でありません。
放置しておくと立木が倒れたり、表層土砂崩れや流木被害を発生させます。
植林したからには、育林して伐採まで一貫して人の手が必要なのです。
伐らないで保護すべき立木もある

日本の山林は急峻な地形が多いです。
多数の死者を出し、家屋を失う水害や土砂災害を幾度も経験しています。
江戸時代から伐木を制限する決まり(規制)がありました。
あきらかに山崩れが起きそう(すでに起きている)な山林もあります。
私たちが現場で見てて、「あと数年で崩れるな…」と感じる植林地も数多くあります。
そんな場所は立木を残すようにしたり、作業道をつけません。
現場感覚でも見た目で、立木の根張りで土砂災害を防ごうとするものです。
国有林や公有林だけが山崩れを注意していても限界があります。
地続きの民有林が勝手に伐採を繰り返していては、総合的な山林機能が低下します。
災害防止の保安林制度

17種類の防災目的として、保安林制度があります。
土砂崩れ防止や水源涵養(雨水保水機能) などが含まれます。
個人の山林が保安林に指定されていても売買は可能です。
しかし、伐採や変更は自分の山林であっても勝手にできません。
すべての山林が営利、経済目的ですと、無計画な伐採で広域的に不利益を被る可能性があります。
近年の巨大台風や地震災害により、人命財産が毀損するのは重大な問題です。
山林機能の回復には数十年の年月がかかります。
植林育林したり林道敷設、治山工事した資産が失われ、莫大な国家の損失になります。
役割が変わってきて、求められる山林機能
人口減の日本においても木材需要は堅調にあります。
木材は住宅建材だけでなく、物流梱包資材、バイオマス発電燃料としても需要が高まってきてます。
CO2削減のために生産地が近い国産材資源を、大切に使う活動は継続されるでしょう。
これまでのように木材資材をたくさん産み出す植林地としての役割から、山林にはCO2吸収や土砂災害防止のための、公益的な機能も求められてます。
気候変動も意識され、これからは保安林の対象指定範囲も広がることが予想されます。
CO2対策、温暖化で台風など強風への防風林対策や、海洋資源の保護を目的とする漁業対策等に、山林、森林機能に期待する声が世界的に高まっていくでしょう。
山林を所有しているが…
保安林指定の解除について制度上は可能としてます。
しかし、一度指定されると解除になる例はとても少ないです。
営利目的としての保安林解除は認められません。
かわりに保安林所有者には、固定資産税などの税制上の優遇があります。
また、保安林内の一部の立木を更新のために択伐したり、間伐することが認められるケースもあります。
重ねてですが、保安林は自己所有の山林なのに手入れや伐採ができません。
相続したり、山林売買するときに注意が必要です。
「山林所有者になった!」と思いきや、立木伐採はもちろん、手入れや立ち入りも制限されることもあるのです。