林業経営者や森林所有者は、苗木を植えて立木を育てて伐採し丸太を生産供給します。
最低でも30年以上の長い年月を立木の育成にかけますが、その間にさまざまなリスクを背負うことになります。
長期投資は不安ですが、考えられる立木へのリスクを明らかにすることで検討しましょう。
自然によるリスク
土砂崩れ

大雨や地震による土砂崩れで育てた木や投資した林道を失うリスクがあります。
自然災害なので原則的に誰にも責任を問うことができませんが、復旧工事には多額の費用が掛かります。
国や自治体の復興計画に基づく復旧作業のやり方に協力しなければならないこともあります。
場合によっては、その土地での林業経営をあきらめなければならないこともあり得ます。
風で倒れる

強風や台風で木が倒れることを風倒(ふうとう)といいます。
伐採で倒した木ではないのでほとんどの風倒木は、外部ではわかりませんが幹にダメージがあります。
さらに「かかり木」といって倒れかけた木が別の木によりかかった状態になります。
林業死亡事故原因で最も多い「かかり木」処理は安全技術と時間を必要とします。
このように伐採した丸太より価値が低くなり、かつ搬出に多額の費用が掛かる風倒は林業経営の大きなリスクとなります。
虫害

キクイムシを代表とする虫害は一度発生すると広範囲で長期にわたり被害木を発生させます。
多くの種類の害虫(菌やウィルス)が確認されていて、発生のメカニズムはよくわかっていないので予防法が確立されてません。
現在のところ被害が発生すると拡大を防ぐために、虫害エリアを早く伐採する方法がとられてます。
シカの食害(獣害)

現場によく行くものの感覚としても北海道においてシカが増えています。
エゾシカは木の枝や葉、樹皮を食べます。
食害を受けると腐朽がすすみ立ち枯れして木材として価値がなくなってしまいます。
シカの農業被害が深刻ですが林業被害も甚大です。
山火事

森林火災は自然現象でもあるので一定数は必ず発生します。
しかし、タバコ、焚火、野焼き、放火など人為的な原因もあり、発生すると被害が広範囲にわたります。
何十年も投資して手がけた森林資源を一瞬で失うことになるため、林業従事者は火の取り扱いを厳重にしなくてはなりません。
社会によるリスク
境界がわからなくなる、勝手に伐採される
先ほどの土砂崩れまでではないものの、風化による落石崩落のような小規模な土地の形状変化は常時起きています。
それにより隣地との境界がわからなくなることがあるのです。
さらに私たちが実際に経験したことがありますが、立木を売りたい山林所有者に案内されて現場に行くと、あるはずの立木がすべて伐採されていたのです。
何者かが無断で勝手に他人の財産である立木を違法伐採して盗んだ犯罪です。
こういうことがたまにあります。
丸太の取引相場の下落

グローバルに取引される現代では、丸太など木材資源も世界の相場にリンクします。
販売当時にリスクについての説明不備があったとされる国有林分収林でも問題になっています。
金融ショックなどがあると住宅販売状況や物流が悪化し相場が乱れます。
林業経営において植えてから伐りだすまで30~40年かかり、その時の相場を想定することはほぼ不可能でしょう。
確かに相場が下落する可能性もあり得るのです。
林道の整備費用の負担
隣接する山林所有者から共同で使用できる林道整備のために費用の一部の負担を求められることもあります。
共同で使用する林道は国公有林も参画していることが多く、森林組合で扱う補助金もあります。
しかしながら、少額でも山林所有者の費用負担が発生することがあります。
どんな資源投資にもリスクがあります
山林資源への投資は公共的な側面があり、視野を広くすると地球環境にもCO2吸収ということで好影響があります。
農業や養殖漁業の食料資源と同じくリスクが存在します。
すべてのリスクを排除することは不可能ですが、紹介したリスクを念頭に立木生産や林業経営を考えていく必要があります。