北海道で70年にわたり立木や丸太売買に携わっている弊社は、これまでさまざまな山林所有者や林業家にお付き合いさせていただきました。
中には、信頼いただき何世代にもわたって、山林の管理を委託していただく所有者もいます。
立木の売り渡しは物品授受と違い取引が簡単に完結せず、立木を売り渡し伐採後の山林資産価値を低下させる恐れもあります。
私たちも自戒の意味を込め、避けたい立木売買取引を紹介します。
商談のときに避けた方が良い買手
山林売買は不動産取引ですが、立木売買は動産の売買であり、通常は搬出の期限や方法を決めて契約し、その後すぐに支払いをします。
地域により商習慣が異なったりしますが、適切な立木売買にならずにトラブルになることもしばしば耳にします。
立木売買の専門事業者でない

一見すると所有する機械や設備は同じようですが、丸太売買を生業とする木材業者ではなく、建設事業者であることも多くあります。
兼業とする事業者もいますが、公共事業の建設業を主体として立木伐開という開墾のような請負事業者ということもあります。
丸太の売買に精通しておらず、現在、製材工場が欲しい丸太径や長さなどのサイズを熟知せず、立木の価値を最大限に引き出す能力がない事業者かもしれません。
立木売買契約書がない

金額や契約面積など詳しいことを決め双方合意したまでは良いのですが、契約書を作らないという事業者がいたそうです。
昔の立木売買の商習慣はそうなのかもしれませんが、書面がないというのは現代では理解できません。
約束と違う場所の立木伐採につながったり、面積、期限など条件が違うこともあり得ます。
不動産売買のように立木売買には必ず契約書を作り、買い手が重要な部分を説明する事がのちにトラブルにならないようにする重要なポイントです。
代金の支払いが遅い

契約を結べば買主は代金を支払いますが、突然、支払日を先延ばしにされたりすることもあり得ます。
契約で約束してるのに支払いが遅れたり、そもそも契約書での支払いが伐採後や後日支払いというのは、不払いの可能性もあり売主を不安にさせるので問題があります。
税金の支払いもせず、実態は倒産状態の伐採業者も存在していたことがありますので、注意が必要です。
売買ブローカーだった

立木を売りたいと契約したのが伐採業者ではなく個人で、立木売買ブローカーだったということもあります。
昔はその地域の立木や山林売買は、特定の人が支配するなんていうこともあり、ブローカーを通さないと立木の売買ができないような地域もあったようです。
現在は法整備され環境が変わりましたが、地域によっては現在も個人ブローカーの売買関与を聞きます。
ブローカー行為そのものは違法ではありませんが、まったく売買事情を知らない伐採業者が来て、トラブル発生時の責任関係が明確になりにくく、事業収益が発生するので、会社の登記をしたり納税しているのか確認が必要です。
後々、トラブルに巻き込まれる恐れもあるので注意してください。
伐採作業現場で
立木売買契約では搬出期限が3年というのが一般的で、契約期間は伐採作業が約束通り完了するまで続きます。
「動産の売買契約の本質を理解しているか?」は、売り先を決める上での大事なポイントです。
作業の安全対策ができてない
伐採現場は非常に危険で、事故や災害がとても多く起こります。
林業での災害死者数は、全国で年間30~40人と産業規模に比べても、とても多いことがわかります。
立木伐採作業は安全対策が適切かどうかは重要なポイントで、安全教育や対策が常時おこなわれているかも大切です。
自分の所有林で死亡事故が発生すると、取り返しがつかないことになり、心理的な損害は消えることはありません。
境界を軽視、無視している

民事上、隣地との境界は絶対であり、境界の確認をしないで作業している事業者は注意が必要です。
越境しての伐採は「誤伐」と呼ばれ、損害賠償を請求されることになります。
ましてや境界を無視したり、故意に越境したりすると「盗伐」とされ、刑事上の窃盗罪で犯罪となります。
林道、作業道の付け方が不適切

伐採業者によって、林道や作業道の付け方が違います。
経験がないのにコストを優先して危険な作業道、集材道を急傾斜に設置したり、崖上から危ない道路を設けたのを見たことがあります。
安全対策は、林道や作業道のつけ方にでてきます。
さらに林道や作業道の付け方は、敷設後の土砂災害を引き起こす可能性を増減する要素となります。
山林の将来を考えているか、注意深く見る必要があります。
コスト度外視ですと伐採搬出費が高騰し、結果的に立木価値を下げてしまい収入源となり林業経営を圧迫しますが、安全対策や伐採後のことを考えて林道づくりを考える事は大切なことです。
近隣の農家から苦情が…

山林の入り口には農家が多くあり、トラブルを避けたいものです。
木材の運搬や振動騒音で迷惑をかけることにもなるので、あらかじめ近隣の農家に挨拶をしているかの確認が必要です。
伐採適期に入った山林を所有している方で、過去のトラブルで近隣の農家所有農地を通行させてもらえず、迂回すると莫大な搬出コストがかかるため伐採できない事例もよくあります。
隣地とトラブルが発生すると、将来にわたって通行許可してくれなかったり、後々のさらなるトラブルにもつながりますので要注意です。
せっかくの価値ある山林が、過去のトラブルで隣地所有林道の通行許可が出ず、10km以上も林道新設しなければならないので費用が莫大になり、手を付けられない事例はよくあります。
道路の使用許可を得ていない
他の山林所有者や市町村等の公有林の林道を通行するときは、使用許可を得なければなりません。
林道は共用道路が多く、使用の届け出が必要な場合もあり、適切に手続しているか確認が必要です。
伐採や搬出作業によって道路を汚したり、痛めたりすると修復する義務があります。
ゴミを捨てていく

使用したオイルや伐採機械消耗品や、飲食のゴミなどを山林内に捨てていく業者もいます。
昔は山林内にゴミを投棄していく慣習は確かにありましたが、このような行為は許されることではありません。
近年はいなくなりましたが、数十年前は伐採作業中に飲酒してたり、喫煙しながら作業している業者がいたそうです。
飲酒運転はもちろん違法ですし、タバコの不始末で山火事が発生する可能性もあります。
伐採後のあとも考えて…
立木の価値を高く評価し、値段をつけてくれる業者に売り渡したいのは、誰でも同じです。
しかし、高価で契約したものの近隣農家との関係がこじれてしまい、今後の農道通行を許可してくれなくなったりすると、山林の資産価値は大きく下がります。
伐採作業では、民事上のトラブル防止に努めてくれる事業者を選定すべきです。
また、事故が多い林業作業では安全対策がとりわけ重要で、他人が引き起こした事故とはいえ所有林内で死傷されたりするのは、心理的に良いことは一つもありません。
危険な作業には、必ず無理な施工計画があり原因が存在します。
作業現場において災害にもろい作業道や伐採の仕方があると、のちの植林後にも土砂災害等の崩落が起きやすくなります。
間伐でも、どの木を切るのかは太い長いや売り価値だけで決められず、事後のほかの立木の安全生育も考えなければなりません。
災害に強い山林をつくれるかが、長期でみた収益の最大化につながります。